ジャック・セロス :フラッグシップのシュブスタンスとは

Jacques Selosse Substance

シャンパーニュ地方に革新をもたらしたジャック・セロス。その名は、カリスマ性と独自の哲学で知られるワインメーカーとして、世界中の愛好家を魅了しています。現当主アンセルム・セロスの手により、自然農法とブルゴーニュ的な醸造スタイルを融合させたそのアプローチは、従来のシャンパーニュの常識を覆すもの。フラッグシップキュヴェ「シュブスタンス」は、唯一無二の味わいと製法で、年間わずか約3,000本という希少な存在です。今回は、セロスの革新性とそのワインの魅力を紐解きます。

レコルタン・マニピュランのパイオニア

ジャック・セロスは間違いなく、世界で最も大企業がひしめく産地、シャンパーニュにおいて、今日現役の生産者の中で最もカリスマ的、あるいはエキセントリックと言える造り手でしょう。現在のRM(レコルタン・マニピュラン)のムーヴメントを起こし、新しい文化を打ち立てた功労者、その人です。

ビオディナミにも飽き足らず

現当主のアンセルムは、優れたワインは優れたブドウのみからつくられるとの信念のもと、1991年頃からは伝統的農法が主流であったシャンパーニュにおいて、ビオディナミ(有機自然農法)の実践を初めました。しかし、次第にその農法にも疑いを持ち、日本の農学者、福岡正信氏の著書「わら一本の革命」に影響を受け、独自の自然農法に転換していきます。(福岡氏が逝去する2年前、アンセルムは来日時に愛媛の福岡氏自宅を訪ねています。) 

ブルゴーニュスタイルの醸造

醸造は極めてブルゴーニュ的で、ほぼ100%グランクリュに存在する35のシャルドネの区画を全て、ルフレーヴから購入した小樽にて、区画別に醸造。オーク樽で醸造は、当時前衛的とされ、大きな物議を醸しました。また、葡萄自体も可能な限り遅摘みされた熟度の非常に高いブドウを用い、ドサージュを低く抑えています。

シュブスタンス:ソレラをシャンパーニュに……!?

シュブスタンス、つまり「本質」と名付けられた本キュヴェは、ジャック・セロスが拠点とするアヴィーズ村のシングルヴィンヤードのブラン・ド・ブランで、フラッグシップとも言えるワイン。いわゆる継ぎ足し熟成の「ソレラ」方式で熟成されたワインをボトリングしており、このソレラにはなんと1980年代からのワインが入っていると言います。

泡の出るモンラッシェ、あるいは、コルトン・シャルルマーニュ

スパークリング・モンラッシェとも呼ぶべきその味わいは、官能的で豊潤な果実味がフレンチオークと強靭なミネラルに支えられており、あらゆる深さと厚みを兼ね備えながらも、質量的な重さは全く感じさせません。年間わずか約3,000本しか仕込まれない本ワイン。その類稀なる味わいをお楽しみください。