江戸切子 酒グラス「麻の葉巻」|着物から生まれた、流れる文様

江戸切子の文様が、グラスを斜めに駆け上がっていく。

篠崎硝子工芸所の「麻の葉巻」は、伝統文様を整然と並べるのではなく、まるで一枚の布を巻きつけたようにグラスの周囲へ展開した酒器です。

着想の原点にあるのは、着物の柄。

初代・篠崎清一氏が考案した意匠を、現在まで受け継いでいます。

着物から生まれた「麻の葉巻」

名前にある「麻の葉」は、日本で古くから使われてきた幾何学文様のひとつ。

「麻の葉巻」では、その麻の葉だけを全面に施しているわけではありません。

流れるような大きな構成を中心に、その両側へ「麻の葉」と「四角籠目」という二つの江戸文様を配置しています。

細かな幾何学模様と、大きく抜けた透明な面。

密度の違うカットが連続することで、グラスを少し回すだけでも見える景色が変わります。

着物の柄をそのまま硝子へ移すのではなく、立体の器だからこそ成立する文様へ。

「巻」という名前も、この流れをよく表しています。

切るところと、残すところ

江戸切子というと、グラス全体を細かなカットで埋め尽くした作品を想像するかもしれません。

けれど「麻の葉巻」には、あえて大きく透明な部分が残されています。

細かく刻まれた麻の葉。
規則正しい四角籠目。
そして、何も刻まれていない硝子。

その間を大胆なカットが横切ります。

すべてを装飾するのではなく、切らない部分までデザインにする。

だからこそ、酒を注いだときには液体の色が透明な面に現れ、その周囲で細かな切子が光を拾います。

三代へ受け継がれる篠崎硝子工芸所

篠崎硝子工芸所は、1957年創業の江戸切子専門工房。

初代・篠崎清一氏から二代目・篠崎英明氏、そして次世代へと技術を受け継ぎながら、伝統文様と独自のデザインを組み合わせた作品を制作しています。

使用するガラスにもこだわり、工房ではカガミクリスタルのクリスタルガラスを採用。

透明度の高い素材へ細かなカットを入れることで、光がいくつもの面で反射し、文様そのものが立体的に浮かび上がります。

「麻の葉巻」は、初代が考えた意匠を今も作り続ける、篠崎硝子工芸所の系譜がよく表れた作品です。

酒を注いで、完成する景色

この酒グラスは、直径約59mm、高さ約67mm、容量約120ml。

ぐい呑みよりゆったりとして、一般的なロックグラスより小ぶりなサイズです。

日本酒を少し多めに注ぐのはもちろん、ウイスキーや焼酎などを少量ずつ楽しむ酒器としても使いやすい大きさ。

ただ、空の状態と酒を注いだ状態では、見え方が大きく変わります。

透明な部分を通して酒の色が現れ、周囲の細かな文様へ光が反射する。

「麻の葉巻」は、使って初めてもう一つの表情が現れる江戸切子です。

写真では異なる色を三客並べています。

同じ文様でも、色が変わるだけで光の柔らかさやカットの見え方まで変わる。

一客を選ぶ楽しさと、色違いを並べる楽しさ。

どちらも、この作品ならではです。


篠崎硝子工芸所 酒グラス「麻の葉巻」

日本・東京|江戸切子|酒グラス|約120ml

着物の柄から着想し、「麻の葉」と「四角籠目」の伝統文様を流れるように組み合わせた、篠崎硝子工芸所の江戸切子です。

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