
イチローズモルト 秩父ディスティラリーII|第2蒸溜所、最初のシングルモルト
2019年に始まった秩父の新しい蒸溜所が、一本のシングルモルトになった。
「イチローズモルト 秩父ディスティラリーII」は、ベンチャーウイスキーの秩父第2蒸溜所から生まれた、最初のシングルモルトです。
蒸溜所が稼働を始めてから、原酒が樽の中で時間を重ねること約6年。
2025年、ようやく「CHICHIBU DISTILLERY II」の名を冠した一本が世に出ました。
第一蒸溜所から、わずか600メートル
秩父第2蒸溜所があるのは、埼玉県秩父市。
2008年に稼働した秩父蒸溜所から、約600メートルほど離れた場所にあります。
距離だけを見れば、すぐ隣。
けれど、中身まで同じ蒸溜所をもうひとつ造ったわけではありません。
第2蒸溜所は2019年10月に生産を開始。第一蒸溜所の考え方を受け継ぎながら、生産規模を広げ、新しい設備とともに次の秩父をつくるために設けられました。
「II」という名前は、単なる増設を意味する数字ではありません。
ここからまた別の秩父が始まったことを示しています。
直火で蒸溜するという選択
第2蒸溜所を特徴づけるもののひとつが、ガスによる直火蒸溜です。
初留、再留ともにポットスチルを直接火で加熱する方式を採用。
間接的に加熱する方法に比べ、管理には手間がかかりますが、蒸溜所ではこの方法によって、力強さや厚みを持った酒質を目指しています。
発酵槽も第一蒸溜所とは異なります。
第一ではミズナラ製の発酵槽が使われているのに対し、第2ではフランス・タランソー社によるフレンチオークの発酵槽を採用しています。
同じ秩父という土地。
同じ造り手。
それでも、設備や造りを少しずつ変える。
第2蒸溜所は、第一をそのまま大きくした場所ではなく、秩父のウイスキーを次へ進めるためのもうひとつの実験場でもあります。
バーボンバレルを軸にした、最初の一本
秩父ディスティラリーIIは、バーボンバレルを主体に構成されたシングルモルトです。
メーカー資料では、直火蒸溜による重厚な味わいと艶やかな果実香が特徴とされ、濃厚な蜜を思わせる甘さ、深い果実味、スモーキーでモルティな余韻が紹介されています。
香りには、バニラ。
そこへパイナップルキャンディや洋ナシのような果実。
口に含むと、はちみつ、アップルパイ、カスタードクリームを思わせる甘みに、シナモンやナツメグのスパイスが重なります。
最後には、麦の厚みを伴ったスモークが長く残る。
華やかな果実と、直火蒸溜による力強さ。
第2蒸溜所が目指す方向が、この一本から少しずつ見えてきます。
完成ではなく、最初の地点
このボトルで興味深いのは、名前にヴィンテージも熟成年数も書かれていないことです。
記されているのは、
CHICHIBU DISTILLERY II
という蒸溜所の名前。
海外正規取扱情報では、最初のリリースは4〜5年程度の原酒を中心に構成され、今後は時間の経過とともに、より熟成した原酒を使っていく計画も紹介されています。
つまり、この一本だけを見て第2蒸溜所の完成形を決めることはできません。
5年後。
10年後。
同じ蒸溜所から出てくるウイスキーは、今とは違う表情になっているはずです。
秩父ディスティラリーIIは、完成した歴史を振り返るためのボトルではなく、これから続く歴史の最初にあるボトル。
そこに、この一本を今見る面白さがあります。
イチローズモルト 秩父ディスティラリーII
日本・埼玉県秩父市|シングルモルト・ジャパニーズウイスキー|700ml|55%
2019年に生産を開始した秩父第2蒸溜所から、2025年に初めてリリースされたシングルモルト。バーボンバレルを主体に構成され、直火蒸溜による厚みと果実味、スモーキーな余韻を持つ一本です。
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