
大場硝子 Villain|「魔」をかたちにした江戸切子猪口
平和な世界へ、魔がそっと忍び込む。
大場硝子加工所の江戸切子「Villain」は、そんな少し不穏な情景から生まれた猪口です。
伝統的な江戸切子には、縁起のよい文様や自然を題材にした作品が数多くあります。
その中でVillainが表現するのは、「魔」や「邪」。
酒器としての美しさだけではなく、ひとつの問いまで作品の中に込められています。
「魔に染まるのか、魔を飲み干すのか」
大場硝子加工所は、Villainに込めた思いを次のように表現しています。
「平和な時代へ、魔は静かに忍び寄る。
その魔によって邪に染まった世界を、自ら飲み干し、再び平和を取り戻すのか。
それとも、自分自身も魔に染まってしまうのか。
その答えを決めるのは、使う人自身。」
酒器に酒を注ぎ、最後まで飲み干すという行為そのものが、作品のストーリーにつながっています。
「Villain」という名前は単なる装飾的なネーミングではなく、この作品の考え方そのものです。
金赤と黒、二層の硝子から生まれる表情

Villainは、カットだけでなく硝子素材そのものにも特徴があります。
使用しているのは、透明な「透き地」の上に金赤と黒、二層の色硝子を被せた素材。
表面にある黒。
その下に隠れた金赤。
さらに深く削った先に現れる透明な硝子。
刃を入れる深さによって、ひとつの器の中から異なる色が現れます。
江戸切子では「何を刻むか」だけではなく、どこまで削るかによっても景色が変わる。
Villainでは、その特徴が作品の印象を大きく左右しています。
整った文様に入り込む、鋭いカット
上部には、細密な幾何学文様。
規則的に刻まれた文様は、光を受けると無数の細かな反射を生み出します。
その一方で、下からは大きく鋭い透明のカットが入り込む。
細かな文様がつくる秩序と、それを切り裂くような大胆な形。
どこか穏やかさと緊張感が同居するような構成です。
「平和な世界へ魔が忍び寄る」という作品の背景^を知ってから見ると、この大きなカットも単なる装飾とは少し違って見えてきます。
「悪」を眺めるのではなく、使う
Villainは、鑑賞するだけの作品ではありません。
実際に酒を注ぎ、手に持ち、飲むための猪口です。
酒が入ると、透明なカットを通して液体の色が現れ、金赤や黒の硝子と重なります。
少しずつ飲み進めれば、器の見え方も変わっていく。
そして最後には、酒がなくなった器だけが残る。
魔を飲み干したのか。
それとも、魔に染まったのか。
その問いまで含めて日常の酒器として成立させているところに、Villainの面白さがあります。
江戸切子に、物語を刻む
細かな文様。
二層に重ねられた金赤と黒。
大胆に削られた透明な面。
Villainには、江戸切子の技術そのものを見る楽しさがあります。
しかし、それだけではありません。
なぜこの色なのか。
なぜこのカットなのか。
なぜ「Villain」という名前なのか。
背景を知ることで、目の前の器の見え方が変わる。
酒を楽しむための器でありながら、使う人に少しだけ考える時間を残す。
大場硝子のVillainは、そんな江戸切子です。
大場硝子 江戸切子 猪口「Villain」
日本・東京|江戸切子|猪口|クリスタルガラス
透き地に金赤と黒、二層の色硝子を被せた素材を用い、「魔」をテーマに制作された大場硝子加工所のVillain。
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