
nondo「権化」4本セット|生酛・MO CHUISLE・Rafters・PEAT、米糠から生まれる4つの表現
精米で削り落とされる「米糠」まで、米の個性として酒に戻す。
岩手県遠野市のnondo(non°)が手がける「権化」シリーズは、米、米麹だけでなく米糠まで醸造に取り入れ、「お米の可能性を追求する」という思想を形にしたクラフトサケです。
今回ご紹介するのは、権化 生酛/MO CHUISLE/Rafters/PEATの4本。原料の核は共通しながら、生酛と水酛、搾り方、米糠への火入れ、土地の風景という異なるアプローチによって、まったく違う表情へ展開されています。
岩手・遠野で「米を飲む」ことを考えるnondo

nondoは、岩手県遠野市を拠点に、米づくりから酒づくりまでを行う造り手です。
掲げるテーマは、「お米を『食べる時代』から『飲む時代』へ」。
土を大切にしながら自然な農法で稲を育て、添加物に頼らず、米の持つ味わいや発酵の可能性を引き出していきます。
その思想を最も象徴するのが「権化」シリーズ。nondoは、米の味や土地の個性は白米だけではなく、栄養や香味を多く含む米糠にも宿ると考え、一般的には精米工程で取り除かれる米糠まで発酵へ組み込んでいます。
4本に共通する「権化」という考え方
nondoは「権化」シリーズを、米糠まで使って醸す酒として展開しています。
「健全な土から育った米を、できるだけ余すことなく使いたい」という考えのもと、米・米麹・米糠を中心に、その土地と発酵そのものを酒へ映し出します。
興味深いのは、4本が単なる味違いではないことです。
生酛は酒母づくり、MO CHUISLEは滴り落ちる液体だけを取る搾り、Raftersは古い木材と槽を使う伝統的な圧搾、PEATは藁の煙による米糠の燻焼——それぞれ違う工程から「米」という素材を掘り下げています。
権化 生酛|シリーズで初めて「生酛」に挑んだ一本

これまで権化シリーズは水酛仕込みを中心としてきましたが、権化 生酛はシリーズで初めて生酛仕込みを採用した一本です。
江戸時代から続く生酛の考え方を用い、協会酵母、醸造用乳酸、化学的な添加物を使用せず、木桶で醸造。無添加・無濾過・生原酒として仕上げられています。
味わいは奥行きがあり、柔らかな甘味と切れのある後口が特徴。
さらにこの一本の面白さは温度にあります。冷酒ではバランスよく、温度を上げると米と米糠由来のふくよかさが開き、アルコールの輪郭もより明確になります。
冷酒、常温、燗。同じ酒の中で表情が大きく変わる、4本の中でも特に「飲み方」による変化を楽しめる一本です。
MO CHUISLE|甘味のあとを追う、ワインのような酸

MO CHUISLEは、穀物由来の甘い香りから始まり、口に含むとその甘さが素早く引き、後から伸びのある酸が追いかけてくる一本です。
nondo自身、ソムリエや飲み手から「ヴァン・ジョーヌのよう」「アルザスワインのよう」と表現されることがあると紹介しています。
ほのかな甘味に対して、自然由来の乳酸がつくるふくよかな酸。さらにアルコールが溶け合い、米からできていることを忘れさせるようなクリアなバランスへ仕上げられています。
特徴的なのが搾り方です。強制的に圧搾せず、自然の力で滴り落ちる液体のみを瓶詰め。
原料を使い切ろうとする「権化」の思想とは対照的に、最後の搾りでは最も繊細な部分だけを取る。その贅沢さもMO CHUISLEの個性です。
Rafters|200年前の古民家の木材で、酒を搾る

Raftersは、味だけでなく「搾る道具」まで時間をさかのぼった酒です。
圧搾には、男柱、跳ね木、槽を使う古い方法を採用。
男柱と跳ね木には、約200年前の古民家で使われていた大黒柱と垂木を再利用し、槽も江戸時代に酒蔵で実際に使われていたものを修理して使用しています。
「Rafters」という名前も、建物を支えてきた垂木や木材の記憶を思わせます。
味わいは、シャープな酸、軽い甘味、グレープフルーツを思わせる柑橘香。
自然栽培の米と、何世代も前の木、そして現在の職人の手仕事。nondoが「自然と人の調和」と表現する一本です。
PEAT|遠野の野焼きの風景を、香りとして酒にする

4本の中で、最も直感的に土地の風景を表現しているのがPEATです。
nondoの田んぼがある集落では、年に数回、野焼きや藁焼きが行われます。
その季節、辺りは煙に覆われ、藁や干草が燃える独特の香りに包まれます。
PEATでは、自分たちが無農薬・無肥料で育てた藁を使って米糠を燻焼。土地で毎年繰り返される煙の風景を、香りと味へ置き換えています。
名前はウイスキーの「peat」を想起させますが、ここで使われるのは泥炭ではありません。
遠野の藁と米糠によるスモーキーさ。土地の匂いそのものを酒へ持ち込むという意味で、権化シリーズのテロワール思想が最も分かりやすく現れた一本です。
同じ米糠から、4つの異なる方向へ
4本を並べると、「権化」が単なる米糠入りの酒ではないことが分かります。
生酛は発酵の入り口を変える。
MO CHUISLEは搾りを最小限にし、液体の繊細さを取る。
Raftersは古い道具と人の力で搾る。
PEATは米糠に煙の風景を重ねる。
素材は同じでも、発酵、圧搾、火、道具が変われば、酒の個性は大きく変わります。
4本セットで味わう意味は、それぞれの優劣を比べることではなく、一つの米と一つの土地から、どこまで異なる表現が生まれるのかを体験できることにあります。
nondo 権化 4本セット
岩手県遠野市|nondo(non°)|クラフトサケ/その他の醸造酒|米・米糠・米麹を中心に使用
権化 生酛|525ml|13%
生酛・木桶仕込み。柔らかな甘味と切れ。冷酒から燗まで温度で表情が変化。
権化 MO CHUISLE|525ml|12%
甘味のあとに伸びる酸。強制圧搾せず、自然に滴り落ちた液体のみを瓶詰め。
権化 Rafters|525ml|14%
200年前の古民家の木材と江戸期の槽を再利用した伝統的な搾り。シャープな酸と柑橘。
権化 PEAT|525ml|13%
自家栽培の藁で米糠を燻焼。遠野の野焼きの風景をスモーキーな香味へ。
米糠まで酒に戻し、さらに仕込み、搾り、道具、煙という異なる手法を重ねる。nondoの「お米の可能性を追求する」という思想を、4方向から体験できるセットです。
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