農口尚彦研究所 山廃愛山 無濾過生原酒 2019|「酒米のダイヤモンド」と熟成の山廃

「生酒は、できるだけ早く飲むもの」。そんなイメージから少し離れたところに、この一本があります。

農口尚彦研究所 山廃愛山 無濾過生原酒 2019 Vintage。

兵庫県産の希少な酒米「愛山」を使い、農口尚彦の代名詞ともいえる山廃造りで醸造。

しかも、火入れをしていない無濾過生原酒でありながら、2019というヴィンテージを掲げ、熟成由来の香りと味わいを見せています。

「酒米のダイヤモンド」と呼ばれる愛山

愛山は、山田錦と雄町をルーツに持つ酒米です。農口尚彦研究所は、その品質の高さと栽培の難しさ、生産量の少なさから「酒米のダイヤモンド」と紹介しています。

粒が大きく溶けやすく、高精白でも旨味を引き出しやすいことが特徴。山廃愛山 2019では、兵庫県産愛山を使用し、精米歩合55%で仕込まれています。

華やかさだけでなく、甘味と旨味に厚みを持たせやすい愛山。その個性を、力強い酸と旨味を引き出す山廃造りでどう見せるかが、この酒の面白さです。

農口尚彦が約60年向き合ってきた「山廃」

山廃造りは、酒母を育てる際に、自然の乳酸菌の力を利用する伝統的な方法です。生酛造りで行う「山卸し」という米をすり潰す工程を省く一方、酒母が完成するまでには3週間から1か月ほどを要し、管理にも手間がかかります。

農口尚彦が山廃造りに出会ったのは、杜氏になったばかりの1960年代前半。最初に目指した淡麗な酒が地元の客に受け入れられず、より濃く、旨味のある酒を求めて山廃造りにたどり着きました。

そこから約60年。農口尚彦研究所は、山廃ならではの酸味、膨らむ旨味、重厚感、そしてキレを、現代の食事に合わせて磨き続けています。

「2019 Vintage」は、発売年ではない

農口尚彦研究所の「Vintage」に記された年号は、発売年ではなく、主にその酒に使われた米の収穫年を表します。

造った酒をその年に売り切るのではなく、一つひとつの状態を見ながら低温で貯蔵し、味わいが整ったものを届ける。農口尚彦研究所が大切にしているのは、酒を「造る」ことだけではなく、時間をかけて「育てる」ことでもあります。

この2019 Vintageに、綿菓子やナッツを思わせる熟成由来の複雑な香りが現れているのも、その時間の積み重ねによるものです。

綿菓子、ナッツ、発酵バターへ

公式のテイスティングコメントでは、香りは綿菓子やナッツ。口当たりは柔らかく、リッチでクリーミーな甘味を持ちます。

そこにミネラリーなニュアンスと、収斂性を伴う渋味が加わり、甘味だけに寄らないバランスをつくります。余韻には、発酵バターを思わせる風味。

無濾過、生、原酒という言葉から想像する若々しい力強さだけではなく、熟成によって生まれた複雑さが同居しているところが、この2019 Vintageの特徴です。

無濾過・生・原酒のまま

「無濾過生原酒」は、一般的な炭素濾過を行わず、火入れをせず、加水によるアルコール度数の調整も行わない酒を指します。

山廃愛山 2019はアルコール分19度。要冷蔵で管理される一本です。愛山の柔らかな甘味、山廃の酸と旨味、そして2019年から重ねてきた時間。その三つを一度に見ることができます。

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