ジャック・セロス イニシャル|3つのグラン・クリュ、3ヴィンテージで描くブラン・ド・ブラン

「入口」でありながら、すでにセロスの核心。

ジャック・セロス イニシャルは、コート・デ・ブランのグラン・クリュ、アヴィーズ、クラマン、オジェのシャルドネから造られるブラン・ド・ブランです。

3つの連続するヴィンテージを重ね、樽で育て、低いドザージュで仕上げる。

熟した果実、トースト、蜜蝋、チョーク、塩味が一体となるイニシャルは、ジャック・セロスという造り手を知るための「最初の一本」でありながら、その思想を十分に感じられるキュヴェです。

ジャック・セロス|シャンパーニュを「畑のワイン」として捉える

ジャック・セロスを現在の世界的な存在へ押し上げたのが、アンセルム・セロスです。

アンセルムは1970年代から、シャンパーニュを単なる発泡性ワインではなく、ブルゴーニュのように畑、土壌、樹齢、収穫年の違いを映すワインとして捉えてきました。

収量を抑え、十分に熟した果実を収穫し、樽を使ってワインを育て、ドザージュを最小限に抑える。こうした考え方が、セロス特有の「ワインとしての厚み」を生み出しています。

Initial|「最初」を意味するキュヴェ

“Initial”という名の通り、このキュヴェはセロスの世界への入口として位置づけられています。

ただし、一般的な意味でのスタンダードキュヴェとは少し異なります。

グラン・クリュのシャルドネのみを使い、複数ヴィンテージをブレンドし、樽熟成と長い瓶熟成を経てリリースされるため、最初の一本でありながら、すでにかなり高い密度と複雑さを備えています。

アヴィーズ、クラマン、オジェ。3つのグラン・クリュ

イニシャルのシャルドネは、アヴィーズ、クラマン、オジェの3つのグラン・クリュから。

セロスのテクニカルシートでは、主に斜面下部の区画から果実を得るとされています。

近年のWine Advocateの解説では、南向き主体、一部東向きの比較的低い位置にある区画で、上部斜面のV.O.に比べて果実の量感やふくらみを得やすいことが説明されています。

コート・デ・ブランらしいチョーク質のミネラルを土台にしながら、イニシャルにはより肉付きのある果実と豊かな質感が表れます。

3つの連続するヴィンテージを重ねる

イニシャルは単一年ではなく、3つの連続するヴィンテージを組み合わせて造られます。

たとえば2025年4月デゴルジュマンの近年ロットでは、2019年をベースに2018年、2017年のリザーヴワインをブレンド。

若いヴィンテージのエネルギーと、少し熟成したリザーヴワインの複雑さを一つにすることで、毎年の個性を残しながら、イニシャルらしい調和をつくっています。

樽で1年。ワインをゆっくりと育てる

セロスでは、228L、400L、600Lといった複数サイズの木樽を使って一次発酵を行います。

ワインは約1年間樽で育てられ、毎年一定量の新樽もローテーションへ加えられます。

目的は強い樽香をつけることではなく、適度に酸素と触れさせながら、果実、酸、旨味、香ばしさを一つにまとめること。

この樽使いが、セロスのシャンパーニュを「泡のある白ワイン」と感じさせるほどの厚みにつながっています。

3年以上の瓶熟成と、ロットごとに変わるドザージュ

テクニカルシートでは、イニシャルはデゴルジュマンまで3年以上熟成するとされています。

ドザージュは固定ではなく、時期やロットによって変化します。

従来の資料では約5g/Lとされる一方、近年では、2025年4月デゴルジュマンが2.7g/L、同年7月の別ロットが2.5g/Lという例も確認されています。

そのため、イニシャルは「商品名」だけでなく、デゴルジュマン日まで確認すると、そのボトルの背景がより明確に見えてきます。

オレンジピール、桃、アプリコット、蜜蝋

近年のイニシャルでは、香りにオレンジピール、桃、ドライアプリコット、トースト、蜜蝋。

別のロットでは、レモンコンフィ、マジパン、白い花、チョークといったニュアンスも挙げられています。

熟した果実の甘やかな香りに、パンやナッツ、蜜蝋のニュアンスが重なり、その奥にコート・デ・ブランらしいチョークと塩味が残ります。

豊かな果実を、鮮やかな酸と塩味が支える

口中ではフルボディで、シャンパーニュとしては非常に肉厚。

一方で、近年の評価では鮮やかな酸、きめ細かなムース、長い塩味の余韻が高く評価されています。

果実は豊かでも重くなりすぎず、最後にはミネラルと塩味が輪郭を取り戻す。これがイニシャルの大きな魅力です。

V.O.との違い|下部斜面と上部斜面

同じアヴィーズ、クラマン、オジェのシャルドネを使う代表的なキュヴェが、V.O.(Version Originale)です。

イニシャルが主に斜面下部の果実を使い、よりふくよかで果実味豊かな表情を見せるのに対し、V.O.は主に斜面上部の区画を使います。

V.O.はより長い瓶熟成と低いドザージュによって、さらに直線的でチョーキー、ミネラル主体のスタイルへ。

同じ3村でも、畑の位置によってここまで表情が変わることを示す、セロスらしい2つのキュヴェです。

シュブスタンスとの違い|3ヴィンテージとソレラ

さらにジャック・セロスを象徴する一本が、「シュブスタンス」です。

イニシャルが3つの連続ヴィンテージを重ねるのに対し、シュブスタンスは1980年代から続くソレラ方式を応用し、複数年のワインを継ぎ足しながら造られます。

イニシャルがその時点の3ヴィンテージの調和を見せるキュヴェなら、シュブスタンスは「時間の積層」そのものを表現するキュヴェです。

年間約2,700ケース。それでも入手困難

セロスの資料では、イニシャルの生産量は年間およそ2,700ケース。

セロスの中では比較的生産量の多いキュヴェですが、世界的な需要が非常に高く、日本国内でも継続的に入手できる銘柄ではありません。

ジャック・セロスを初めて知るための一本でありながら、その「入口」自体が希少であることも、現在のイニシャルを象徴しています。

ジャック・セロス イニシャル

フランス|シャンパーニュ|コート・デ・ブラン|Avize・Cramant・Oger|Grand Cru|Jacques Selosse|Chardonnay 100%|Blanc de Blancs|3つの連続ヴィンテージをブレンド|750ml|約12%|ドザージュはデゴルジュマンにより異なる

3つのグラン・クリュ、3つのヴィンテージ、樽熟成、長い瓶熟成、低いドザージュ。熟した果実とトースト、蜜蝋、チョーク、塩味を重ねながら、セロスの哲学を最もわかりやすく示すブラン・ド・ブランです。

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※デゴルジュマン時期やロットによって、ドザージュなどの仕様が異なる場合があります。また、在庫状況は随時変動します。