
クリュッグ 1990|名高いヴィンテージが残した、時間の表現
春の霜害を乗り越え、暑く晴れた夏によって成熟した1990年。
シャンパーニュ地方にとって、1990年は決して順調なスタートを切った年ではありませんでした。
冬は非常に穏やかだった一方、4月には強い霜がブドウ畑を襲います。春の冷涼な気候によって開花も長引きました。
しかし、その後に訪れたのは、暑く乾燥した夏。
十分な日照のもとでブドウは成熟し、クリュッグはこの年に生まれたワインを、豊かでバランスがよく、しっかりとした骨格を備えていたと表現しています。
こうして生まれたのが、クリュッグ 1990(Krug Vintage 1990)です。
「良い年」ではなく、その年を表現する
クリュッグにとって、ヴィンテージ・シャンパーニュは単純に「優れた収穫年だから造る」というものではありません。
その年にしか存在しない気候やブドウの個性を捉え、ひとつの年の物語を表現すること。
それがクリュッグのヴィンテージに対する考え方です。
1990年の構成は、
ピノ・ノワール 40%
シャルドネ 37%
ムニエ 23%
すべて1990年に収穫されたブドウから造られています。
ピノ・ノワールを中心としながら、シャルドネもほぼ同じ割合を占め、さらにムニエが約4分の1。
力強さだけに偏るのではなく、構造、丸み、フレッシュさを重ね合わせた構成です。
1988・1989・1990、3年連続のヴィンテージ
クリュッグの歴史の中でも、1988年、1989年、1990年は興味深い3年間です。
通常、ヴィンテージは毎年造られるものではありません。
しかしクリュッグは、この3年を連続してヴィンテージとして残しました。
しかも、3年間の気候条件はそれぞれ異なります。
クリュッグ自身も、この1988・1989・1990年を、異なる個性を持った特別な3年間として位置づけています。
そして1990年以降、次にクリュッグがヴィンテージを造ったのは1995年。
その意味でも1990年は、一つの時代を締めくくるヴィンテージでもあります。
10年以上の時間を経て世に出た1990年

クリュッグのヴィンテージは、完成してすぐに市場へ出るわけではありません。
メゾンのセラーで10年以上の熟成を経てからリリースされます。
クリュッグ 1990は、少なくとも2004年末には市場に登場していました。
収穫から約14年。
すでに一般的なヴィンテージ・シャンパーニュを大きく超える時間を経て、ようやく飲み手のもとへ届けられたことになります。
30年以上の熟成がつくる表情
1990年の収穫から、すでに30年以上。
若い頃のクリュッグ 1990に見られたフローラルなニュアンスや力強さは、時間とともにさらに褛雑な香味へと変化しています。
サザビーズのセリーナ・サトクリフMWは、熟成した1990年について、
オレンジを思わせる香りや、ブリオッシュ、クルミ、ジンジャーなどのニュアンスを挙げながら、豊かさと同時に生命力が残っていると評価しています。
若いシャンパーニュには存在しない、パンやナッツ、スパイス、熟した果実。
時間そのものが、新しい香りをグラスの中につくっていく。
長期熟成したクリュッグを味わう面白さの一つです。
もう一つの1990年、「Krug Collection 1990」
クリュッグ 1990には、さらに興味深い続きがあります。
通常のヴィンテージとしてリリースされたボトルとは別に、クリュッグは一部のボトルを自社セラーに残していました。
そして、そのままさらに長期間熟成。
約25年を経た2015年春、これらのボトルは「Krug Collection 1990」として新たな段階を迎えます。
クリュッグはCollectionを、ヴィンテージの「第二の表現」として位置づけています。
重要なのは、Vintage 1990とCollection 1990が、まったく別のシャンパーニュではないことです。
基本となる構成は、
ピノ・ノワール40%、シャルドネ37%、ムニエ23%。
同じ1990年です。
異なるのは、時間の過ごし方。
通常のVintage 1990は先にメゾンを離れ、それぞれの場所で熟成を続けました。
一方のCollection 1990は、クリュッグのセラーでさらに長い年月を過ごしています。
その結果、Collection 1990を試飲した評論家からは、より長く熟成しているにもかかわらず、通常のVintage 1990よりも驚くほど若々しく、フレッシュに感じられるという評価も出ています。
同じ1990年でも、時間によって変わる
ここに、クリュッグ 1990の面白さがあります。
同じ年。
同じブレンド。
しかし、熟成する環境と時間によって、その表情は変わっていく。
一つのヴィンテージが、時間によって異なる姿を見せる。
クリュッグがCollectionという形で示したのは、シャンパーニュにとって「熟成」が単なる古さではないということなのかもしれません。
今回今未でご紹介しているボトルは、後年にリリースされたCollectionではなく、オリジナルのKrug Vintage 1990です。
1990年のブドウから生まれ、長い熟成を経て世に出され、その後さらに20年以上の時間を重ねてきた一本。
現在では、その年月そのものも、このシャンパーニュを構成する一部になっています。
クリュッグ ヴィンテージ 1990
フランス・シャンパーニュ|ヴィンテージ・シャンパーニュ|1990年|750ml|12%
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