
楯野川 極限|純米大吟醸の、その先へ
720mlの一本を造るために使う米は、約9kg。そこから92%を削り、残された8%で酒を醸す。
山形県酒田市の楯の川酒造が手がける「楯野川 純米大吟醸 極限」は、その名の通り、純米大吟醸というカテゴリーをどこまで突き詰められるのかという挑戦から生まれた日本酒です。
使用するのは、兵庫県産の山田錦。
その米を約40日かけて精米歩合8%まで磨き上げます。
2013年の誕生以来、「極限」は楯の川酒造を象徴する一本として造り続けられています。
精米歩合8%とは、米を92%削るということ
日本酒に記載されている「精米歩合」は、玄米を磨いたあとに、どれだけの米が残っているかを示す数字です。
つまり、精米歩合8%ということは、
玄米の92%を削り、中心部の8%だけを酒造りに使用するということ。
楯の川酒造によると、「極限」では山田錦を約40日かけて磨き、最終的には直径約2mmほどの大きさにまで精米します。
720ml一本を造るために必要となる玄米は、約9kg。
単純に「たくさん削った酒」というだけではなく、わずかに残された米を、どのように酒へ変えていくのか。
そこからが「極限」の酒造りです。
なぜ、ここまで米を磨くのか
酒米の外側には、タンパク質や脂質など、酒の味わいに影響を与える成分が多く含まれています。
精米によってそれらを少しずつ取り除くことで、より透明感のある、繊細な酒質を目指すことができます。
ただし、精米歩合が低ければ低いほど、それだけで酒がおいしくなるわけではありません。
楯の川酒造自身も、精米歩合だけを競うことを目的としているわけではなく、高精白した米を使いながら、どのような味わいを生み出せるかを追求しています。
そのために欠かせないのが、自社での精米と、長年積み重ねてきた高精白米を扱う技術です。
楯の川酒造では原料米を自社で精米し、農家や米の特徴まで把握しながら酒造りへつなげています。
8%まで磨いた米を「醸す」という難しさ
ここまで小さく磨いた米は、通常の酒米と同じ感覚で扱えるものではありません。
「極限」では、小仕込みによって醸造し、醪(もろみ)の温度を0.1℃単位で細かく管理しています。
現在の「極限」は、2021年に完成した新しい仕込み蔵で醸造されています。
新仕込み蔵には比較的小容量のタンクが導入され、タンク内の温度差を抑えながら、より緻密な発酵管理を行える環境が整えられています。
米を8%まで磨くことと、その小さな米から狙った酒質を造り上げること。
「極限」の本質は、精米歩合8%という数字だけではなく、その先の醸造技術にあります。
「酒米の王様」山田錦を100%使用
使用されている酒米は、兵庫県産山田錦100%。
山田錦は、酒造好適米を代表する品種として、数多くの高級日本酒に使われています。
その山田錦を8%まで磨き、小さな中心部から酒を醸す。
現在の「極限」は、華やかな香りとフレッシュな口当たりを持ちながら、ふくよかな味わいと輪郭のある酒質、そしてゆっくりと続く余韻を特徴としています。
極端に米を磨いているからといって、味わいがただ軽く、淡くなるわけではありません。
透明感を持ちながら、その中に山田錦由来の旨味や膨らみを残す。
削ることで消すのではなく、残された8%から何を引き出すのか。
そこに、この酒の面白さがあります。
すべての日本酒を「純米大吟醸」にした酒蔵
「極限」を理解するうえで欠かせないのが、楯の川酒造そのものです。
楯の川酒造の歴史は1832年に始まります。
庄内を訪れた上杉藩の家臣が当地の水の良さに驚き、初代・平四郎に酒造りを勧めたことが始まりとされています。その後1854年に酒造業を開始し、翌1855年には荘内藩主・酒井公から「楯野川」の酒銘を授かったと伝えられています。
そして平成22酒造年度から、楯の川酒造は山形県で初めて、製造する日本酒をすべて純米大吟醸とする蔵へ転換しました。
純米大吟醸を特別な一本として造るのではなく、蔵そのものを純米大吟醸に特化させる。
その方向性の中で、2013年に誕生したのが「極限」です。
8%の「極限」から、1%の「光明」へ
楯の川酒造の高精白への挑戦は、8%で終わりませんでした。
2017年には、精米歩合**1%**の純米大吟醸「光明」を発売。
約75日、1,800時間をかけて米を直径約1mmにまで磨くという、さらに極端な精米を実現しています。
現在のラインナップを見ると、18%、8%、そして1%と、純米大吟醸の中でも異なる精米歩合の酒が造られています。
その中でも「極限」は、2013年から蔵を代表する存在として造られてきた一本。
8%という数字は、楯の川酒造が高精白の世界を追求してきた歴史そのものを感じられる数字でもあります。
酒だけではなく、外側にも山形の文化を
現在の「極限」には、ラベルにも特徴があります。
使われているのは、山形県の伝統工芸品である深山和紙。
強さを持ちながら、柔らかく温かみのある質感を持つ和紙です。
さらに、以前の桐箱から白を基調とした化粧箱へと変更され、酒そのものが持つ華やかさやフレッシュさを表現したデザインになっています。
酒米、精米、醸造だけではなく、手に取るところまで含めて一つの商品としてつくられていることが分かります。
まずは冷酒で、その繊細さを味わう
楯の川酒造が推奨している温度は、5〜10℃程度の冷酒。
冷やした状態から少しずつ温度が上がっていくことで、華やかな香りや米の旨味、余韻の変化も楽しめます。
料理と合わせるなら、味付けの強さで酒を覆ってしまうものよりも、素材そのものの繊細さを楽しめる料理が向いています。
蔵元では京湯葉をペアリングの一例として紹介する一方、ブルーチーズやゴーダチーズのようなコクのあるチーズとの組み合わせも提案しています。
日本料理だけに限定せず、酒の香りや余韻を軸に料理を選べるところも、「極限」の楽しみ方の一つです。
「8%」の先にあるもの

92%を削る。
約40日間磨く。
一本のために約9kgの玄米を使う。
0.1℃単位で醪を管理する。
数字だけを並べても、「極限」が通常の純米大吟醸とは異なる方法で造られていることは分かります。
しかし、本当に重要なのは数字そのものではありません。
そこまでして、どんな日本酒を造りたかったのか。
華やかな香り。
透明感。
米の旨味。
ふくよかな膨らみ。
そして、静かに続いていく余韻。
精米歩合8%という極端な条件を、単なるスペックではなく一杯の味わいとして成立させる。
それが、楯野川「極限」です。
楯野川 純米大吟醸 極限
日本・山形|純米大吟醸|兵庫県産山田錦100%|精米歩合8%|720ml|アルコール度数15%
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