Sassicaia-1985

Sassicaia-1985

サッシカイア 1985|イタリアワインの歴史を塗り替えたヴィンテージ

後年、ロバート・パーカーが100点を与え、「1985年に世界で造られたワインの中で最も偉大」とまで評したサッシカイア。

さらに彼は、20世紀に造られたワインの中でも指折りの一本として、この1985年を挙げています。

ところが、今回のボトルのラベルをよく見ると、現在の「Bolgheri Sassicaia DOC」という表記はありません。

記されているのは、

「VINO DA TAVOLA DI SASSICAIA」

当時の分類では、テーブルワイン。

世界最高峰とまで評価されることになる一本が、当時のイタリアワイン制度では既存の原産地呼称に収まらなかった。

Sassicaia 1985の面白さは、この大きなギャップから始まります。

1985年が、なぜ特別だったのか

テヌータ・サン・グイド自身が1985年を、「トスカーナワインにとって歴史的な年」と位置づけています。

春には霜があり、生産量は減少しました。

一方で、房数が抑えられたことで果実がより均等に育ち、その後は適度な雨と暑く晴れた夏に恵まれます。

特に興味深いのは、ワイナリーがこの年について、糖度や酸などの成熟と、果皮や種子に関わるフェノール成熟が同時に理想的な状態へ達したと記録していることです。

Decanterによれば、収量は1ヘクタールあたり35ヘクトリットル、生産量はわずか約62,500本でした。

85%のカベルネ・ソーヴィニヨン

1985年のブレンドは、Decanterの記録では、

カベルネ・ソーヴィニヨン 85%、カベルネ・フラン 15%。

サッシカイアらしい、非常にシンプルな構成です。

収穫時の果実温度は25〜28℃に達していましたが、テヌータ・サン・グイドでは気温の低い時間帯だけに収穫を行い、発酵槽も流水で冷却。

恵まれたヴィンテージを、そのまま任せるのではなく、熟した果実をどう扱うかまで細かくコントロールしていました。

その後、ワインは22か月間樽熟成

公式記録では約40%がスラヴォニアンオーク、約60%がフランス・トロンセ産を中心とするオークで、一部にアリエ産も使用。新樽比率は65%でした。

現在のサッシカイアとは少し異なる、1980年代の造りを見ることができる部分でもあります。

そもそも、なぜトスカーナでカベルネだったのか

サッシカイアの始まりは、1985年より40年以上前に遡ります。

マリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタ侯爵が、ボルゲリでカベルネを使ったワイン造りを始めたのは1940年代。

当時のトスカーナでは異例の選択でした。

テヌータ・サン・グイドの畑には、石や小石を多く含む土壌があります。

「Sassicaia」という名前も、この石の多い土地に由来します。

当初は家族や友人のためのワインでしたが、1968ヴィンテージが1971年に初めて市場へ出されます。

後に「スーパータスカン」と呼ばれるワインが次々と登場しますが、サッシカイアはその流れに先んじた存在でした。

100点。それでも「Vino da Tavola」

1985年を語るうえで、やはりロバート・パーカーの評価は外せません。

パーカーはこのワインを繰り返し100点と評価。

2014年の自身の記事では、1985年のサッシカイアを20世紀を代表する数本のワインの一つとし、さらに1985年に世界で造られたワインの中で最も偉大だとまで評価しています。

Decanterも、この100点評価が1985年のサッシカイアをさらに特別な存在にしたと振り返っています。後年の垂直試飲では、Jane Ansonも100点を付けました。

しかし、1985年当時は「Vino da Tavola」。

品質が低かったからではありません。

サッシカイアの造りが、当時の制度より先を走っていたためです。

ワインに、制度が追いついた

状況が変わったのは1994年。

Bolgheri DOCの規定が改定され、赤ワインが正式に認められると同時に、Bolgheri Sassicaiaがサッシカイアのためのサブゾーンとして設定されました。

さらに2013年にはBolgheri DOCから独立し、現在のBolgheri Sassicaia DOCへ。

このDOCを名乗ることのできる畑は、テヌータ・サン・グイドの所有地にあります。

つまり1985年のボトルは、

Vino da Tavolaだった時代のサッシカイアと、現在のDOCへ至る歴史の途中に存在する一本でもあります。

先にワインが造られ、その価値が認められ、制度が後から追いついてきた。

サッシカイアならではの歩みです。

40年以上を経ても語られる理由

1985年の収穫から、すでに40年以上が経過しました。

それでも状態の良いボトルでは、ブラックカラントを中心とした果実に、杉やトリュフ、タバコなど熟成によって生まれた要素が重なりながら、長い余韻やバランスを保った例が報告されています。

Sotheby’sのSerena Sutcliffe MWも、2016年に試飲した1985年について、黒スグリの風味、シルキーな質感、調和の取れた熟成を記録しています。

ただし、40年以上を経たワインでは、ヴィンテージの評価と、目の前にある一本の状態は別の話です。

保管環境や液面、コルク、輸送履歴によって状態は変わります。

1985年というヴィンテージだけではなく、その一本がどのように40年間を過ごしてきたのか。

そこまで含めて向き合うのが、現在のSassicaia 1985です。

世界がボルゲリを知った1985年

サッシカイアは1985年に突然生まれたわけではありません。

1940年代から続いてきた試みがあり、1968ヴィンテージから市場へ出され、少しずつ評価を積み重ねてきました。

その中で1985年は、サッシカイアとボルゲリの存在を世界へ強く印象づけたヴィンテージとなりました。

ロバート・パーカー100点。

約62,500本という限られた生産量。

そして、ラベルに残された「VINO DA TAVOLA」の文字。

現在の評価を知ったうえで1985年のボトルを見ると、この一枚のラベルの意味まで違って見えてきます。


サッシカイア 1985 / Sassicaia 1985

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