
エマニュエル・ルジェ クロ・パラントゥ 2016・2020|アンリ・ジャイエが蘇らせた1級畑
ヴォーヌ・ロマネのわずか約1ヘクタール。かつて荒地だった区画をアンリ・ジャイエが切り拓き、ブルゴーニュを象徴する畑の一つへと押し上げた——それが「Cros Parantoux(クロ・パラントゥ)」です。
今回ご紹介するのは、Emmanuel Rouget(エマニュエル・ルジェ) Vosne-Romanée 1er Cru Cros Parantoux 2016 / 2020。
同じ畑、同じ造り手でありながら、2016年と2020年では表情が大きく異なります。冷涼な緊張感と精密さを感じさせる2016年。熟度と凝縮感を備えながら、鮮度とフォーカスを失わない2020年。二つのヴィンテージを並べることで、クロ・パラントゥという畑の輪郭がより鮮明に見えてきます。
アンリ・ジャイエが蘇らせた「Cros Parantoux」

クロ・パラントゥは、ヴォーヌ・ロマネ村にあるPremier Cru(プルミエ・クリュ)。面積は約1.01ヘクタールという極めて小さなクリマです。
現在この畑を分かち合うのは、Emmanuel RougetとDomaine Méo-Camuzetの2生産者のみ。
その名を世界的なものにしたのが、20世紀ブルゴーニュを代表する造り手Henri Jayer(アンリ・ジャイエ)でした。
かつて採石場や荒地として残されていたこの区画に、ジャイエは1950年代から少しずつ畑を取得。地表近くに大きな岩が残る土地を整備し、ブドウを植えていきました。1970年までに約0.715ヘクタールを所有し、1978年にはCros Parantoux単独のワインを初めてリリースします。
リシュブールのすぐ上部に位置しながら、Grand CruではなくPremier Cru。しかし、その小ささ、土地の個性、そしてジャイエが築いた歴史によって、現在ではヴォーヌ・ロマネを語るうえで欠かせない畑となっています。
Henri JayerからEmmanuel Rougetへ
エマニュエル・ルジェは、アンリ・ジャイエの甥にあたる造り手です。
1980年代末からジャイエの仕事を引き継ぎ、畑と醸造の考え方を継承しながら、自身の名でドメーヌを築いてきました。
収量を抑え、ブドウの成熟を見極め、基本的に除梗した果実を用いること。発酵前の低温浸漬を取り入れ、果実の純度と香りを引き出すこと。そして樽熟成を通して、力強さではなく、絹のような質感と鮮度を残すこと。
ジャイエの方法論をそのまま再現するのではなく、畑とヴィンテージに応じて調整しながら現在へつないでいる点が、ルジェのワインの重要な魅力です。
2016|冷涼な緊張感と、研ぎ澄まされた輪郭
2016年のブルゴーニュは、春の深刻な霜と病害に悩まされた年でした。一方で夏以降は乾燥した好天に恵まれ、残った果実は高い成熟度へ到達。ヴォーヌ・ロマネは地域の中では比較的被害が抑えられた場所の一つでした。
Cros Parantoux 2016も霜の影響は限定的だったとされ、収量を保ちながら高い集中力を備えたワインとなっています。
香りには、ブラックベリー、ラズベリー、スミレ、黒茶、スパイス、土や石を思わせるニュアンス。果実の密度がありながら、酸が芯を通し、輪郭は非常に精密です。
2016年の魅力は、単なる濃さではなく、果実・酸・ミネラル感が細い一本の線のようにつながっていること。クロ・パラントゥらしい緊張感を、特に明瞭に感じられるヴィンテージです。
2020|凝縮した果実と、シルキーな力強さ
2020年は、ブルゴーニュ史上でも非常に暑く乾燥した生育期の一つ。収穫は例年より早く、赤ワインは色調とタンニン、果実の凝縮度が高いヴィンテージとなりました。
一方で、優れた畑と造り手のワインには、熟度の高さだけではなく、驚くほどの鮮度が残されています。
Cros Parantoux 2020は、ダークチェリー、ラズベリー、カシス、スミレ、甘いスパイスを思わせる芳醇な香り。口当たりは滑らかで密度が高く、豊かな果実の中心をしっかりとした酸と細かなタンニンが支えます。
2016年が鋭く研ぎ澄まされた印象を見せるとすれば、2020年はより豊満で包み込むようなスケール感。それでも重さだけに傾かず、長い余韻の中にクロ・パラントゥ特有のフォーカスが残ります。
2016と2020。同じ畑が見せる二つの表情
2016年は、冷涼感、酸の張り、ミネラル感、精密な輪郭。
2020年は、熟した果実、厚み、シルキーな質感、そして集中力。
方向性は異なっていても、共通するのは果実の純度と、余韻の長さ、そして力強さの中に残る繊細さです。
ヴィンテージの個性を覆い隠すのではなく、それぞれの年を映しながら「Cros Parantoux」という場所の芯を残す。二つのボトルを並べる意味は、そこにあります。
Vosne-Romanée 1er Cru Cros Parantoux Emmanuel Rouget 2016 / 2020
フランス|ブルゴーニュ|コート・ド・ニュイ|ヴォーヌ・ロマネ|Premier Cru Cros Parantoux|Emmanuel Rouget|Pinot Noir 100%|赤ワイン|750ml
アンリ・ジャイエが切り拓き、その哲学を受け継ぐエマニュエル・ルジェが現在へつなぐクロ・パラントゥ。2016年と2020年は、同じテロワールがヴィンテージによってどれほど異なる表情を見せるのかを知ることのできる二つのボトルです。
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